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「ビーッ」。陽光が差し込む窓が閉められ、開演を告げるブザーが響く。暗くなった館内でスクリーンに向かう。約2時間に及ぶ「映画の旅」の始まりだ。 新潟県上越市の「高田世界館」は、芝居小屋「高田座」として明治44年開業。大正5年頃「世界館」と改称し常設映画館になった。 建設から105年。当時の姿で営業する映画館としては日本最古とも。「ルネサンス式白亜の大劇場」の客席は最初、畳敷きだったという。通常、映画館では見ることがない窓も芝居小屋の名残だ。 高度経済成長が終わると映画業界は斜陽に。ここも細々と営業していたが老朽化が進み、平成19年の新潟県中越沖地震後は廃業が現実的になった。そんな中、歴史的な建造物を次世代に残そうと、地元の有志や映画ファンによるNPO法人「街なか映画館再生委員会」が発足。21年4月から同再生委が管理に乗り出し「高田世界館」として再スタートした。 支配人の上野迪音(みちなり)さんは上越市出身。大学で映画論を学んだ後、26年から唯一の常駐スタッフになった。上野さんは「映画と異なる要素を映画館に引き寄せ、新たな価値観が生み出せたら最高。イタリア映画の上映期間中、地元のイタリア料理店で映画にゆかりのメニューを出してもらうとか…」と目を輝かせる。1世紀を超える時を刻んできた場所で、新たな歴史作りが始まっている。