眠れないとき、してはいけないこと скачать в хорошем качестве

眠れないとき、してはいけないこと

森田正馬は「思想の矛盾」について次のように述べています。それは「こうありたい」「こうあらねばならない」という思考と、現実の結果が反対になり、矛盾することを指します。この考え方は、私たちがしばしば混同しやすい概念――主観と客観、感情と知識、体得と理解など――を整理する上で重要です。また、森田は、自然と人為、目的と手段、結果と条件を取り違えることの危険性についても警鐘を鳴らしています。 睡眠における錯誤の具体例 例えば、睡眠について考えてみましょう。「眠る」という行為は人為的に行えるものではなく、自然におちいるものです。それにもかかわらず、「眠れない」という状態を「症状」や「病的」として捉えることには問題があります。本来、「眠れない」とは、眠りたいと思っても思うように眠れないという状況を指しているにすぎません。 ある患者さんがこう言いました。「眠れないと次の日の仕事のパフォーマンスが落ちるので眠りたいんです」と。この場合、目的である「仕事のパフォーマンスを上げたい」という意図は理解できます。しかし、その目的を達成するための手段として「よく眠ること」に執着しすぎることで、かえって「眠る」という自然な行為が阻害されているのです。これは、眠ることが人為的にできない行為であるにもかかわらず、それを目的達成の手段として過剰に期待してしまう錯誤といえるでしょう。 解決策は「人為的にできること」に集中すること このような場合、目的である「仕事のパフォーマンスを上げる」ためには、眠れるかどうかに固執するのではなく、自分が実際にできる行動に目を向けることが重要です。例えば、仕事に関するスキルアップのための勉強や準備に取り組むといった具体的な行動が挙げられます。 不眠治療の本来の意義 では、精神科における不眠症治療や睡眠薬の処方はなぜ行われるのでしょうか。それは、本来、緊急事態に対する一時的な手段として位置づけられるべきものです。例えば、統合失調症で妄想にさいなまれ生命の危機に直面している場合や、手術後の強い痛みで眠れない場合などがその例です。これらはあくまで一時的な対処として薬物療法が用いられるべき状況です。 しかし現代では、「眠れない」という状態そのものを「症状」と見なし、それに対する治療が常態化しています。これは「自然」と「人為」、「目的」と「手段」の区別を誤った結果であり、思想の矛盾が反映されたものといえるでしょう。 当院の取り組み 当院では、「眠れない」と訴える患者さんに対して、まずこの矛盾についてお伝えすることを心がけています。背景に「翌日のパフォーマンスを上げたい」といった目的がある場合には、その目的達成のために患者さん自身が今できる具体的な行動を探すお手伝いをしています。薬物療法に頼るのではなく、患者さんが主体的に取り組める選択肢を見つけることを大切にしています。 仁泉堂医院森田療法