三之助　入院中も子どもらしさを忘れない さいかち学級 скачать в хорошем качестве

三之助　入院中も子どもらしさを忘れない さいかち学級

ナレーション「中原街道、さいかち坂。かつて、道の両側にさいかちの木が植えられていたことから、その名がついたと言われています。その『さいかち坂』沿いにある昭和大学病院には、入院中の子どもたちにとっての特別な場所があります。その名は『さいかち学級』。すくすく育つ、さいかちの木にちなんで名づけられました」 三之助「昭和大学病院の17階に来ております。何かここは病院っぽくないフロアなんですが、こちらがさいかち学級ということで、学級というくらいですから学校みたいなところなんだと思うんですけど、ちょっと入ってみますね。ごめんください。あら？　ちょっと変な人がいますね。何をしているんですか？」 副島さん「明日の講演会の準備です」 三之助「あなたはどなたですか？」 副島さん「私は、さいかち学級の担当をしています副島と言います」 三之助「あれ？　じゃあ、先生ですか？　これでいいの？　先生（赤鼻を指さして）」 副島さん「はい、一応担当の教員です」 三之助「そうなんですか。ここはどういう場所なんでしょうか？」 副島さん「ここは病院に入院している子どもたちが通ってくる教室です」 三之助「それで先生教えてんの？（赤鼻をさしながら）」 副島さん「普段はつけてませんけど」 三之助「そうですよね。相当変わってるなって思ってね。でも何か子どもたちにとって特別な場所だって聞いて来たんですよ」 副島さん「子どもたちが入院していたとしても、ここに来た時は患者であることを忘れて、子どもに戻れる場所という風に考えてやっています」 三之助「何か忘れそうですよね。いろいろね。今日はひとつお話を聞かせてください。よろしくお願いします」 副島さん「よろしくお願いします」 ナレーション「『さいかち学級』の授業は、国語や算数、音楽、図工など、時間割にそって行われています。また、教室に来ることができない、入院中の子どもたちのもとで、ベッドサイド授業も行っています」 三之助「ところで、赤鼻って言うのは何か訳があるんですか？」 副島さん「出会った一日でどうにか人間関係をつくらなければいけないので。そうしないと、もう来てくれないですから。そこに、あの鼻は結構有効です」 三之助「子どもの心をグッと」 副島さん「いやー、反対もありますけどね。『えーっ』って言われる時もあるんですけど、それでも心が動いてくれれば、また関わるきっかけになりますので」 副島さん「メンタル面のケアをすごく考えますね。子どもたちが持っている、悲しいとか悔しいとかつらいとか、そういった感情を出してもいいんだよと。不快な感情も大事な感情の一つなので、持っていていいんですよね。感情に良し悪しはないですから」 三之助「出すことで和らいだりもするでしょうしね」 副島さん「そうですね」 三之助「我慢しないで」 副島さん「きちんと、つらいんだということを言うことで、つらい事に我慢できたりするようになるので、それはすごく考えながら授業や遊びの中で子どもたちに表現してもらっています」 副島さん「あの子たちは自分が病気になったことで周りに迷惑をかけている。親御さんもそうですし、学校もそうですし、きょうだいにもそうですけれども。周りに迷惑をかけている自分はいけない存在なんだと思っているので、そこをきちんと埋めてあげたい。僕は僕でいい。僕がここにいることは大事なことなんだ、って思えるように授業をやったり遊びをやったり関わりをしています。子どもたちは、笑ってくれると子どもに戻ってくれるので。それで、治療に向かうエネルギーをためてくれるので、そこは大事ですね」 三之助「病室は残念ながら笑ったり騒いだりするところじゃないじゃないですか」 副島さん「でもそれをやりに行きます」 三之助「そうなんだ。そうしちゃうんだ」 副島さん「はい」 ナレーション「笑うことが、子どもたちの治療に向かうエネルギーになる。と来れば、ここは笑いのプロ、三之助師匠の登場です。病院から許可をいただき、特別に市民科の授業で落語のワークショップを開いてもらいました」 ナレーション「『さいかち学級』のお子さんにも落語に挑戦してもらいました」 ナレーション「病気のことを忘れ、心から笑える時間が『さいかち学級』にはあります。もちろん、すべては病気を治すため。副島さんは、子どもたちの状態を把握するため、病院の医療スタッフとの連携を密に行っています。副島さんを良く知る、小児科看護師長の福地本さんにもお話を伺いました」 福地本さん「治療をするっていうことはエネルギーが必要なんですね。痛いことも、つらいことも、苦い薬も全部我慢して親とも離れて生活をしている。でも、学校に行く。学校に行くから頑張ろう。学校に行くからお洋服に着替えて、かばんに準備をして『行ってきます』と言って病棟を出ます。『ただいま』と言って帰ってきます。そういう場があるということで、子どもの治療をする意欲が増すんじゃないかなという風に思っております」 三之助「例えば、ここに行って帰ってくるとお子さんの様子が違っていたり、そういうのはお感じになりますか？」 福地本さん「全然違いますね。初めて行く時には『行くの嫌だ』って言っている子もいるんですけど、とりあえず行ってみようと言って来ると、楽しかったみたいでスキップして帰って来るような。体はスキップしていなくても心がスキップしているような、そんな感じがいたします。病棟で見せる顔と学校で見せる顔が違うんですね。それで、学校で見せる顔を私たちは学校の先生たちから伺って、『こんな一面もあるんだな、じゃあこういう風にしてみよう』ということをアドバイスをいただいたりして、それを看護に生かしたり、治療に生かしたりすることが出来ております」 副島さん「つらいなと思うのは、何度も何度も入退院を繰り返しているお子さんが、はたして思春期の時に親友ができるかというと、できないですよ」 三之助「先生が親友になってあげたりっていうことになるのかな」 副島さん「ここにいる間は、そうですね。退院をしてつらいことがあった時に、あそこに行けば赤鼻に会えるしと思ってもらえれば、それを糧にして、もうちょっと頑張ろうかな、諦めるのは今じゃなくていいかなと思ってくれればいいなと思っています」 三之助「ここから学校へ帰ってもそういうケアを」 副島さん「そこはものすごく考えていますね。ここの大きな役割の一つだと思っています」 三之助「これからですね、未来に向かってこの場所がどういう風になっていったらいいんだろう、なんて思ってらっしゃることがあったらお話いただきたいんですけれども」 副島さん「医療が進んだこともあって、子どもの死亡率はどんどん減っています。ただ、もちろん完治するお子さんはいるんですけど、病気を抱えたまま医療とつながらないと生活ができない子どもたちもこれから確実に増えていきますので、その子たちへの教育保障、それから彼らが生きていくためのエネルギーを持つ場所として、このような場所が世の中に増えていけばいいなと思っています。この学級がそういう拠点になるということを今一番考えています」 三之助「それを一つ足がかりにして、どんどんそういう場所が増えていけばいいなっていう、そういうイメージですかね」 副島さん「増える必要があるんだと思っています」 三之助「先生今日はありがとうございました。初めて会った時はただの鼻の赤いおじさんかと思ったら、私まで花が赤くなっちゃってね。いろいろエネルギーをいただきました。ありがとうございます。最後に先生が書いた詩をご紹介して終わろうかと思うんですが」 さいかち　へのへのそえじ さいかちには　子どもが一人も いなくるといい この世から　病気やけがで苦しむ子が いなくなるといい けれど　一人でも そういう子どもがいるのなら さいかち学級で 会えるといい ここでみんなが ここちよい時間を過ごしてくれるといい そうだったらいい そうだったらいい 三之助「ありがとうございました」 副島さん「ありがとうございました」 三之助「次回のとっておきの品川どうぞお楽しみに」