焼き畑で育てた「山のルビー」　伝統農法の記憶を記録に скачать в хорошем качестве

焼き畑で育てた「山のルビー」　伝統農法の記憶を記録に

福井県大野市の歳末を彩る深紅の伝統野菜がある。峠を越えた福井市味見河内町（河内）の特産で、今では珍しい焼き畑農法で育てられた「河内カブラ」だ。正月の縁起物として欠かせない存在だが、農家の後継者難が続き、その農作業の往年の記憶を記録に残す試みが続いている。 河内で赤カブ作りを手がける宮本利子さんと長男の博志さん方に１１月初旬、「福井焼き畑の会」の約１０人が集まった。会では１９９１年から焼き畑体験会を開き、地元と交流を続けている。 　赤カブは大野市の風物「七間朝市」へ売りに出される。１９６０年代初頭まで、人が赤カブを背負って峠道を越えていた。「背板」と呼ばれる枠に、時に重量５０キロを超す赤カブを荷崩れしないよう縄だけでくくり付ける。その技を知るのは利子さん一人になった。 　焼き畑に関わる生活の技を映像に残したいという事務局長の北倉武徳さんの依頼を、利子さんは快諾した。赤カブをワラで４個ずつ２５束に結わえ、１００個、計４５キロをくくって見せた。 　当時、売り手の女性たちは朝４時に河内を出発し、４時間かけて片道１３キロの峠道を歩いた。一日の売り上げは５００円前後。数少ない現金収入だった。利子さんは３０代前半まで赤カブを担いだ。北倉さんは「宮本のばあちゃんしか知らない技を、ぜひ撮っておきたかった。もう今後この村で、赤カブが背板に荷造りされることはないだろう」と話す。