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箏: 砂崎 知子 Koto: Tomoko Sunazaki 三弦: 高畠 一郎 Sangen: Ichiro Takabatake 尺八: 藤本 禘山 Shakuhachi: Teizan Fujimoto 歌詞: 千代の古道踏み分けて 嵯峨野の奥の秋の夜に 大宮人の振り延へて虫を選びし故事も 今更ながら偲ばれて 武蔵野ゆけば仄々と 紫匂ふ薄霧に 見えつ隠れつ打ち招く 尾花の袖も懐かしく 躊躇ふ程に夕暮の 月まつ虫の先づ鳴きて 桐の珠貞く糸秋に 花の錦の機織りや 綴れ刺せ てふきりぎりす 「手事」 草の沈に転寝の 夢の邯鄲現世を 如何に悟るか鉦叩き 帰さを急ぐ馬追の その馬子唄に覚束な 合はす鈴虫轡虫 月影晒す王川に 秋の哀れを声々に 流す調の面白や 流す調の面白や この曲は宮城道雄(1894ー1956)が、奉職していた東京音楽学校の生徒のために、昭和7年に作曲し、同年11月の「邦楽演奏会」で初演されました。古典由来の三曲合奏の形態による手事物形式の歌曲です。作詞は宮城の門人磯部艶子で、この曲の他 にも「四季の柳」、「遠砧」の作詞をしています。 歌詞は、秋の武蔵野の様々な虫たちの声を聴きながら、昔の大宮人が嵯峨野の奥に行って「虫選び」 をしていた様子に思いを馳せて、秋の情趣を歌ってい ます。「大宮」は皇居の尊敬語で、大宮人はそこにいる宮廷人達を意味します。「虫選び」は、大宮人たちが、宮中に持ち帰って鑑賞する為に、様々な鳴き声の秋の虫を選んで採集していたことを言いますが、その 多くは嵯峨野だったようです。 「前奏」では、大宮人達の雅を表現するために、雅楽曲の「越天楽」を思わせるような旋律を用いています。「前歌」の前半は、大宮人の「虫選び」を偲ぶようなゆったりとした優美な旋律で、尺八には雅楽の龍笛の旋律が、箏には楽箏の手がとりいれられています。「手事」「後歌」では、虫の音を描写した個所が、随所にあり、月の美しい秋の夜の情景が思い浮かびます。