『並木河岸』（全話/山本周五郎（心揺さぶる朗読/音声のみ）やるせない苦衷に翻弄され離れた心。再び結んだのは昔逢引した並木河岸。人生の哀切と夫婦の情感を豊かに描く。 скачать в хорошем качестве

『並木河岸』（全話/山本周五郎（心揺さぶる朗読/音声のみ）やるせない苦衷に翻弄され離れた心。再び結んだのは昔逢引した並木河岸。人生の哀切と夫婦の情感を豊かに描く。

▼チャプター情報　※後ろに詳細作品解説について掲載 00:00　タイトル 00:08　一 10:02　二 22:05　三 33:34　四 45:45　五 57:25　六 1:07:55　七 『並木河岸』音声のみ　詳細作品解説　～全話～ ※～前編～　   • 『並木河岸』（前編/山本周五郎（心揺さぶる朗読/音声のみ）三度目の流産で心も弱ったお...  　では、 【手前勝手な鉄次と信じるおてい】【豆知識】（難解な言葉の解説）を綴っています。 ※～後編～　   • Видео  　では、 【亭主という身勝手な存在】【離れそうな心を繋ぐもの】【豆知識】を綴っています。 併せてお読みくださいますと、『並木河岸』の世界観が俯瞰してご理解戴けます。 ※観るシリーズ（動画）はありません。 【亭主という身勝手な存在】 鉄次の身勝手な言い分や振舞に、世の女性陣は、「亭主あるある」をお感じかもしれない。 おていは、「あんたは仕事もあるし、酔って気をまぎらせることもできる。 　でも、あたしには仕事もないし、酔うほどお酒ものめない、ひとりで家にいて、 　ひとりでぼんやり考えているだけよ、頼りにするのはあんただけどーーー そのあんたもはなれてゆくばかりだわ」と、抑えてきた想いが噴き出す。 鉄次は、おていのそんな絶望感を思い遣ることができず、 自分のやるせなさをおていにぶつけるばかり。 三度目の流産という試練に耐えているのは、鉄次だけではないというのに。 おていもまた、外で働く亭主の苦悩を分かりようがない。 世の男性陣には、「女房あるある」と言えようか。 ただ、おていの苦衷を察せられるはずなのに、 向き合わないのは責められても仕方ないことだろう。 息抜きをして、現実に立ち向かう英気を養う、という方策もありだ。 けれど、自分だけ日常から解放されればいいのかと、問い質したいところだ。 夜毎飲み歩き、挙句の果て、気晴らしの旅に出ようとする。 大切な人の痛みは放っておいて、いっ時にせよ、自分だけ逃げだそうという浅ましさ。 現実から逃げても、問題は解決せず残されたままなのだ。 逃げ癖が着くだけで、問題は追ってくるものだ。 鉄次は、漸く、自分の子がすぐには持てない現実を受け容れる気になる。 血の繋がらない長吉を鎹（かすがい）として、おていとやり直す決心をする。 現実と向き合う覚悟を持つ心映えの大切さをも、 この物語は説いているのではないだろうか。 時として、セカンドベストという選択をしなければならないことが、人生にはある。 それをベストにしてゆく道程が、人生の醍醐味。 あの事があったからの今、あの失敗があったからの成功、 そう思えるかどうかが、倖せへの分かれ道ではないだろうか。 鉄次とおていという夫婦の再生物語は、そんなことを考えさせもした。 「並木河岸」での熱い逢瀬があったから、繋がりを取り戻せた。 おていに辛く当たった反省もあってか、鉄次はおていの提案を受け容れ、 長吉を自分の子として、新しい家族になろうとする。 人生は気づいたところから、やり直せる。 いや、新たな心映えで、やり始めればいいのだ。 【離れそうな心を繋ぐもの】 この物語には、三つの鎹（かすがい）がある。 ～後編～の解説では、そのうちの二つ、 【お梶という装置】【長吉という鎹（かすがい）】について綴った。 最重要な結び付け役が、「並木河岸」という、燃え盛る恋の「心振るわせる思い出」である。 随所で、「並木河岸」の情景が語られ、私たちにもその地が心に刻まれてゆく。 鉄次は、子供好きなのに自分の子が持てず、 歓びもなく、老いてゆくだけの人生に嫌気がさしてくる。 誘われるままに、幼馴染みのお梶と息抜きの旅に出ようとする。 けれど、何とはなしにおていに察知され、お梶と待ち合わせの朝、ふいと家を飛びだす。 長吉を連れあてもなく歩き回るうち、気づけば「並木河岸」にいた。 そこで逢引をし、恋焦がれ心燃やした記憶が、二人を再び結びつけるきっかけになろうとは。 心萎える時、おていを慰めてくれたのは、熱き思い出の「並木河岸」だった。 倖せの思い出がある人は、艱難の時を乗り越えられるという。 子供好きの亭主に、我が子を持たせてやれないやるせなさ。 養生もし神信心もし、それでもなお流産してしまうのは、誰が悪いわけでもない。 けれどおていは、自分を責め続ける。 鉄次が家に帰るのは遅く、遊び歩いているのは察しが付く。 冷たい態度に、女ができたかとも、おていは勘繰る。 そうした鉄次を責めることもできずに、 熱い思い出の「並木河岸」に来ては、自らを慰めていたおてい。 仲睦まじかった頃を懐かしむしかなかったことが、何とも切ない。 けれど、その「並木河岸」で、新たな家族のスタートが切られるのである。 倖せの思い出に慰められ、自分を鼓舞する想いでやってきた「並木河岸」が、 新たな倖せの始まる場所となったのである。 鉄次とおてい、そして長吉が寄り添う姿を、 私たちもまた「並木河岸」の木陰に立って、そっと眺めるような気持ちに陥る。 新たな家族の倖せを願わずにはいられない、見事な幕引きである。 【サムネイルについて】 ～前編～ 三度目の流産をし、鉄次に冷たく当たられ、どうしたらよいか、独り悩むおてい。 川面を見やる後ろ姿に、苦悩が滲む。 枝葉をなびかせる風は、夫婦の心に吹き荒ぶ隙間風を象徴するかのよう。 ～後編～ 風に激しく煽られる枝葉は、心に立つ波風に翻弄される二人の姿。 けれど、おていは、何とかして元のような仲睦まじい夫婦関係を、 取り戻したいと願っている。 その日が来ることを諦めない、 明るい未来を信じる強さを感じさせる表情が、印象的なショット。 ～全話～ 鉄次もおていも、子を持てないやるせなさから、人生に絶望する。 やり場のない哀しみが、最後まで、物語を覆っている。 この迷路から、どうしたら抜け出せるのか。 子を三度も失った哀しみと、人生の迷路で苦悩する想いを、この表情が物語っている。 苦悶した果てに明るい未来が訪れるよう、望みを失わない強さも感じさせる情景。 ☆撮影/サムネイルデザイン・制作：堀内和薫（かづまさ） ※撮影地：皇居外苑　桜田門付近の堀端にて（お堀端を「並木河岸」に見立てて） ☆着物：銀座きものギャラリー「泰三」（「染めの聚楽」東京店：京刺繍・染めの逸品呉服店）　 　銘　：青海波濤紋 　※地模様は、生地をひっかくようにして織る特殊な織り方で、今では織れる方がいないそう。 青い海がさざめくような地模様となっている。 そこへ、丸紋で、大きさの異なる波濤が様々な意匠で刺繍されている。一つとして同じ紋はない。 「波濤」は大波の意。夫婦の間に立つ危機的状況を象徴する。 穏やかな紋もあり、正に物語の大団円を表してもいる。 　※『契りきぬ』   • 『契りきぬ』全話/山本周五郎（心揺さぶる朗読/音声のみ）愛の矜持を貫いた珠玉の哀愁物...  のサムネイルにも採用。 　　波濤紋の各意匠はサムネイルでご覧戴けます。 ☆帯　：京都西陣「梅垣織物」※以下の作品のサムネイルに採用。詳細はそちらに。 　※『入れ札』   • 『入れ札』全話／菊池寛（心揺さぶる朗読/音声のみ）人としての矜持を問う菊池寛渾身の作...   　　『夜の辛夷』   • 【朗読〜泣ける時代小説〜】『夜の辛夷』山本周五郎作（音声のみ・独り芝居のような朗読）...   ☆象牙扇子：京都「宮脇賣扇庵」 ☆アンティーク銀簪（ぎんかんざし：菊に流水）・白漆の塗り櫛・組紐：京都「かづら清」　　 ☆鼈甲平簪（べっこうひらかんざし）：銀座「かなめや」 ================================================ ▼堀内成美：ほりうちなるみ プロフィール    / @katarika_narumi   ▼堀内成美オフィシャルホームページ https://www.katarika.net