東京ブロンクス LIVE at Mounkberys / いとうせいこう & TINNIE PUNX（1986） | Japanese Hiphop Rhyme Scheme 118 скачать в хорошем качестве

東京ブロンクス LIVE at Mounkberys / いとうせいこう & TINNIE PUNX（1986） | Japanese Hiphop Rhyme Scheme 118

いとうせいこうとTINNIE PUNK（藤原ヒロシ、高木完）によるダブルネームアルバム『建設的』に収録された『東京ブロンクス』のライブバージョン。87年リリースの12インチシングル『Body Blow』のB面に収録。2003年に再販された『建設的』のボーナストラックとしても収録された。東京とヒップホップの誕生地であるブロンクスが交錯した世界が描かれる。 86年の『建設的』に収録されたオリジナル版『東京ブロンクス』はジャパニーズヒップホップ黎明期にリリースされた楽曲の中では飛び抜けて知名度の高い一曲。90年代にヘッズだった人ならYou The Rock『THE SOUNDTRACK’96』に挿入されてれた「生のラップで踊ろうぜ！」の名台詞に聞き覚えがあるだろう。 1986年と言われてもピンとこないかもしれないが、USではRUN-DMCによるエアロスミスのカバー曲『WALK THIS WAY』がヒットしてようやく一般層にラップが広がりDEF JAM人気に火がつき始めた頃。ビースティ・ボーイズのデビューよりも前の時期である。スチャダラパーやライムスター、ECD、MURO、ZEEBRAといった日本のレジェンドたちが活動し始めるのは、このライブ音源より更に後となる88年頃から。 80年代前期はディスコからクラブへの過渡期であり、当ライブが行われたモンクベリーズの他、日本初のクラブであるピテカントロプス・エレクトスやトゥールズ・バー、P・ピカソなど現在のクラブカルチャーの土台となるさまざまなクラブが生まれ始めた。当時はヒップホップやラップ表現自体が新しく未知の音楽であったため、ヒップホップカルチャーに憧れるヘッズというよりはニュー・ウェイヴやパンクを通過した者たちが新しい現代音楽表現としてラップやドラムマシン、DJのスクラッチなどヒップホップの要素を断片的に取り入れていた。 日本語ラップというものがほとんど存在しなかったこの時期において、ホットドッグ・プレスの編集者だったいとうせいこうは文学表現にも精通しており、当時すでにラップをする上で韻を踏む意識を持っていた。さらに当時のラップのベースとなっているAA、BB、CCという二行連のライミングは、他のポップスの韻詩よりも稚拙であまり面白くないとさえ思っていた。USにおいても多音節韻など複雑なライミングが生まれ始めるのは80年代後期であり、英語のラップでもこの頃はまだシンプルなライムが多かった。 当楽曲の制作時には藤原ヒロシと「これ韻踏んだほうがいい？」「踏まなくてもいいんじゃない」という会話があり、サビ以外はあえて難しい韻を踏まないように作られたようである。 「ラジオもない 電話もない あっても受話器は誰もとらない」のラインは吉幾三『俺ら東京さ行ぐだ』の有名なライン「ラジオも無エ 電話も無エ」のオマージュ。『俺ら東京さ行ぐだ』では何も無い田舎者が東京に憧れる様子がユーモアに描かれているが、当楽曲では東京にいるのに何もかもがなくなっていたという対比となっている。『俺ら東京さ行ぐだ』はリリース翌年の1985年にもハードコアボーイズによるスクラッチレコードが作られたが許可が降りず発禁になるなど、現在で言うサンプリングのようなコラージュ的手法で当時のアーティストたちも面白がって引用していたようだ。 いとうせいこうの功績の一つとして、ヒップホップのライブでは定番のコールアンドレスポンスを定着させたことがあげられる。映画『WILD STYLE』などを通過していない客にはコールアンドレスポンスの「SAY HO!」や「SCREAM!」が通じなく、どうすればよいのかを考えたせいこうは「さわげ！」という言葉の置き換えをすることで客との意思疎通を図りコールアンドレスポンスを成立させた。現在では当たり前になっているお約束な表現もこういった先駆者が工夫して創り上げた土台の上に成り立っており、こういった革新性が当時を知るアーティストから今もなおいとうせいこうが支持される理由である。 この「東京ブロンクス」というキャッチーな言葉は後にさまざまなアーティストに利用された。ブッダブランドとシャカゾンビによる『大怪我』ではイントロではECDが「東京ブロンクス つなぐ直通！」と歌い、トコナXは東京ブロンクスに対するカウンターとして名古屋クイーンズという言葉を生み出した。これは東京 VS 名古屋をサウスブロンクス VS クイーンズのブリッジバトルになぞらえたものである。またSDPのマルチアーティストSITEは、文章を執筆する際に東京ブロンクスという名義にて活動を行っている。 ======================================= 【楽曲情報】Live At Mounkberys Tokyo Bronx / いとうせいこう（Body Blow 収録） Lyrics By – いとうせいこう Label – T.E.N.T Discogs: https://www.discogs.com/ja/release/48... 購入: https://amzn.to/3Jcg1gH ======================================= 【Rhyme Scheme関連リンク】 ・website: https://rhyme-sche.me/ ・Twitter:   / rhymescheme_jp   【ラップへの理解が深まるRhyme Scheme管理人おすすめ書籍】 ■ラップのテクニック、手法を学ぶ ・ジブラの日本語ラップメソッド https://amzn.to/3aAQWf6 ・HOW TO RAP 104人のラッパーが教えるラップの神髄 https://amzn.to/3axE9df ・サイエンス・オブ・ラップ―ヒップホップ概論 https://amzn.to/3g3rHDf ■ラップミュージックの大まかな歴史を学ぶ ・ライムスター宇多丸の「ラップ史」入門 https://amzn.to/3kUwAC9 ・LEGENDオブ日本語ラップ伝説 https://amzn.to/321aqp9 ・私たちが熱狂した90年代ジャパニーズヒップホップ https://amzn.to/321exS7 ・東京ヒップホップ・ガイド https://amzn.to/2E0KZvO ・文化系のためのヒップホップ入門 https://amzn.to/3g7bPiT ・Jラップ以前 ヒップホップカルチャーはこうして生まれた https://amzn.to/3iK7ROW ・ラップは何を映しているのか https://amzn.to/3ayeT6A ■ヒップホップカルチャーへの理解を深める ・ヒップホップ・ジェネレーション https://amzn.to/2DVYBZw ・ヒップホップ・アメリカ https://amzn.to/3aA0Mh3 ・ラップ・イヤー・ブック https://amzn.to/31ZYuUF ・ヒップホップ家系図 シリーズ https://amzn.to/2E0LZA4 ■ヒップホップ名盤紹介 ・チェック・ザ・テクニーク ヒップホップ名盤ライナーノーツ集 https://amzn.to/2YatBvG ・ヒップホップ (ディスク・コレクション)  https://amzn.to/2YceqBZ ・ヒップホップ 2001-2010 (ディスク・コレクション)  https://amzn.to/3g7mJW7 ・HIP HOP definitive 1974 - 2017 https://amzn.to/2FrkuQy ・blast ジャパニーズHIP HOPディスク・ガイド https://amzn.to/3h7YBE0 #ライムスキーム #いとうせいこう #日本語ラップ