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瞑想こそが確かな現実　スマナサーラ長老の法話朗読｜智慧の扉（パティパダー2025年3月号）

瞑想こそが確かな現実 アルボムッレ・スマナサーラ 　皆さんの瞑想修行を妨げる障害は数多くあります。その一つが「私たちの生きるこの世界は確かな現実である」という信仰です。マジシャンのマジックを見るとびっくりするでしょう。誰だって自分の認識する世界が現実だと思っているから、マジシャンが常識外れの現象を演出すると驚いてしまうのです。このような、「私は現実の世界で生きている」という固定観念は、仏道修行をするうえではきつい障害になります。 　私たちは日常を離れて静かな環境で修行することに「現実離れ」というレッテルを貼っているのです。だから多くの修行者は、瞑想することで現実離れした神秘体験を得られるのではないかと期待してしまう。気の毒なことですが、そういう人がいくら修行しても、智慧が顕れるどころか、瞑想する前よりもっとバカになって終わるのです。仏道とは「現実離れ」の教えではなく、自己観察によって「現実」を発見する道なのですから。 　そもそも、私たちが大事にしている「現実」とは何なのでしょうか？　たとえば、食事をすると味を感じますが、「味＝美味しい」ではないのです。「美味しい」とは個人の勝手な妄想です。主観で組み立てられた幻覚です。俗世間に生きる人々は、幻覚に過ぎない「美味しいもの」を追いかけています。「美味しいもの」を研究して製品にし、世に売り出す。「美味しいもの」という幻覚のために必死で頑張ることこそが、「現実的」な生き方だと思っているのです。 　地球上のあらゆるものは、自分の肉体も含めて原子の塊です。物理学者の解説によれば、その原子自体も中身は99.99999…%何もない、カラッポだそうです。でも私たちにとっては手に触れるものが「現実的」にちゃんとあるし、コップも触ったら結構硬いのです。このように、実際はカラッポなものを確かな現実だと信じて、美味しさ、気持ちよさ、富、美しさなどを得ようと必死に頑張っているのが、私たちの生き方なのです。 　そんな私たちも、ブッダが教える「気づきの実践」をする時だけは、現実だと思って幻覚を追う生き方を一旦停止します。思考の回転を一切止めて、「生きること」をひたすら観察し続ける瞑想に挑戦するのです。とはいえ、生まれてからずっと主観の妄想で生きてきた私たちは、幻覚を破って「現実」を生きることに慣れていません。瞑想すると落ち着かなくて気持ち悪くなったり、もう止めたいと思ったりするのは当然なのです。たとえそうであっても、仏道とは幻覚から醒めてリアリティの世界を生きる道なのだと理解してほしいのです。思考・妄想を止めるブッダの瞑想こそが「確かな現実」なのです。（了） 出典：パティパダー2025年3月号「智慧の扉」欄 https://j-theravada.com/about/activit... ～生きとし生けるものが幸せでありますように～ ■使用した素材 VOICEVOX：https://voicevox.hiroshiba.jp/ VOICEVOX:剣崎雌雄 pixabay写真： https://pixabay.com/ja/photos/%E6%B5%...