都市伝説ロング（064）音楽界の最も不穏な都市伝説 скачать в хорошем качестве

都市伝説ロング（064）音楽界の最も不穏な都市伝説

――物語は、1930年代ミシシッピの十字路でロバート・ジョンソンが“悪魔と契約して”天才的ギターを得たという伝説から始まる。彼の「Cross Road Blues」に象徴される“十字路＝霊的境界”の寓意、南部の差別・貧困・ヴードゥー文化という土壌、放浪の末に短期間で飛躍した技巧――説明不能な上達と早逝（27歳）が“悪魔譚”を肥大化させた。ブルースは生の苦痛を昇華する実践であり、ロバートの29曲は祈りと呪いが交錯する“魂の記録”として後世のロックを決定的に刺激した。 第2章は人物像の掘り下げ。差別制度下で唯一の出口が音楽だった彼は、家族の反対や愛する者の死を経て放浪に出る。ボトルネックや同時多声的奏法で“独りでバンド”を実現し、クラプトンやストーンズらへ連なる起点となった。一方、貧困・酒・暴力の影が常に背後にあり、その生々しさが“契約”神話の温床となる。 第3章は「27クラブ」。ブライアン・ジョーンズ、ヘンドリックス、ジャニス、モリソン、コバーン、エイミーらの早逝が連鎖し、ロバートを“始祖”とする呪いの物語が強化された。しかし統計的に27歳のみ突出するわけではない。人は天才の悲劇を納得するために“数字や悪魔”に意味を与える――という心理が神話を駆動する。BIC以前の“白いライターの呪い”など、事実誤認も物語の快楽で増幅される。 第4章はコバーン死をめぐる陰謀論。自殺判定に対し「筆跡不一致」「角度の不自然さ」等がネットで拡散し、“コートニー犯人説”や当局関与説が再生産された。真実より“腑に落ちる説明”を求める心性と、メディア／アルゴリズムが怒りと陰謀をブーストする構造が、現代の“新しい悪魔＝情報”と結び付く。ジョンソン神話と同型の“超人に超自然を求める”欲望がここにも働く。 第5章は「グルーミー・サンデー」。放送禁止や連続自殺の噂で“呪いの曲”と恐れられたが、因果は未証明。大恐慌下の集団的抑うつと、音楽がドーパミンや共感回路を直接揺さぶる神経機序が“感染”のような同調を生む。音楽は癒しと破滅を同居させる感情装置であり、私たちはその危うさに惹かれる。結語として、悪魔譚・27クラブ・呪いの歌はすべて“音楽という神話”の断片で、夢と現実、希望と不安のあいだで結ぶ“見えない契約”を可視化する。音楽は時代や国境を越えて魂を接続し、痛みと美を同時に教える――伝説は恐怖ではなく、人間の深さを物語る装置なのだ。