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入笠山を「ぼっち登山日和」で取り上げるのは、これが2度目になります。 前回は、すずらんの里駅から歩いて、マナスル天文館さんでテント泊。 星降る夜を夢見ていたけれど、結果は――晴天確率85%の山で、15%のほう。 そして今回。 どこか登りたい山を探してネットを漂っていたとき、入笠牧場の管理人、Mさんの「その日そのとき」というブログに出会いました。 その言葉の中にあったのは、誰かが守ってきた風景。 手をかけ、思いを込めて続けてきた時間の積み重ね。 そうか、入笠には、まだ知らない“奥の顔”があったんだ―― 奇しくも、その入笠牧場が、今年度いっぱいで閉鎖されると知り、もう、「行かなくちゃ」が発動していました。 別に行ったからって、何かができるわけじゃない。 時代が移り変わっていくことを、誰も止めることはできない。 美ヶ原の牧場のように、入笠牧場も100年続く牧場だったといいます。 そんな長い時間のなかで、私がたまたまここに立ち会ったことには、大きな意味なんてないけれど、誰かが残そうとしてきた風景を、今この目で見ておきたかった。 ただ、それだけでした。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 入笠牧場での放牧は、2023年(昨年)で終了しました。 2025年の年度末までは、JA上伊那が牧場地の管理を続ける予定だそうです。 その後については、伊那市などが跡地の活用方法――たとえばキャンプ場など――を検討していくとのことです。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 実際にお会いしたMさんは、まさに、あのブログの中の言葉を、静かに、実直に紡ぐ人でした。 牧場管理の仕事のことを「牧の仕事」と呼ぶ、その言い方がとても印象的で―― 土地と生き物に向き合う姿勢が、そのひと言に宿っているように感じました。 19年。 入笠牧場で、たった一人で「牧の仕事」を続けてこられたそうです。 その日々に、どれほどの季節が流れ、どれほどの命が育ち、終わっていったのか。 Mさんから牛たちの一生について話を聞くうちに、胸の奥が、じわじわと、熱をもって揺れました。 食べるという行為の、そのずっと手前にある現実。 命を預かり、命を見送りながら過ごすということ。 これはもう、教科書じゃなく、実際に耳を傾けて知るべきことだと思いました。 食育って、こうやって行うべきなんじゃないか、そう思わずにはいられませんでした。 また、Mさんは、こうもおっしゃっていました。「ユーチューバーは嫌いだ」。 そうでしょうとも!(笑) この牧場で、長い時間をかけて積み上げてきたものは、手っ取り早い視聴数や話題性のための“素材”なんかじゃない。 だからこそ、私は私で、Mさんから受け取ったものを、「何かを記録しておかなくては」というような、責任にも似た気持ちで、誠実に、誠実に映していきたいと思いました。 一枚の写真、一つの言葉が、ほんとうの「記憶」になるように。 年内に、もう一度訪れたいと思っています。 今度は法華道(ほっけみち)から歩いてみたい。 晴れかどうかはわからないけれど――たとえまた、15%だったとしても。 きっとまた、見えるものがあると信じています。 撮影日:2025年7月12日(土)・13日(日)