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3月、札幌駅前の地下歩行空間で開かれたアイヌ民族についてのパネル展。研究者などが差別的と批判していますが、どこが問題なのか、札幌市の対応は適切なのか。検証します。 ■警察官が警戒にあたる物々しいパネル展…アイヌ民族「あまりにひどい」 「アイヌの史実を学ぼう」と題されたパネル展。会場には、大勢の警察官が警戒にあたり、物々しい雰囲気に…。 パネルは、アイヌ民族の同化政策として批判されている「北海道旧土人保護法」を称賛するほか、和人がアイヌを文明化したという趣旨の内容が書かれています。 展示を見たアイヌの女性は…。 アイヌ民族 山下明美さん 「あまりにもひどい」 ■研究者「史実を曲解した内容で差別的だ」 パネルには「アイヌは先住民???」と書かれていますが、よく見ると上から貼られています。 実は、以前のパネルには「全国の日本人と同じ縄文人の子孫となり、先住民とは言えないのでは」と書かれていました。 変更した理由を主催者は「”アイヌが先住民族ではないと断定していると思われてしまう”と会員から指摘されたため」と話しています。 しかし、展示はアイヌが先住民族であることを疑っていることに変わりありません。 研究者は「史実を曲解した内容で差別的だ」と批判しています。 ■考古学者「アイヌの人たちは先住民族といえる」 例えばこちらの表現です。 「日本列島の縄文人は隅々まで同一の祭祀や呪術という精神文化を共有していました」 「彼らの言語は「縄文語」という共通語である可能性があります」 考古学者の著書を引用し、北海道と本州の縄文人の一体性を印象付けることで、アイヌが先住民族であることを疑う根拠にしていると考えられます。 しかし、引用された本人に取材をすると… 。 札幌大学(考古学) 瀬川拓郎教授 「先住民族というのは、いま一般的に言われているのは近代国家のなかで、その国家の支配下に入り独自の言語や文化を持っている人々という定義。なので先住民族というふうに言ったときにはアイヌの人たちは先住民族と言える」 札幌大学(考古学) 瀬川拓郎教授 「先住民族と縄文人を祖先とするかというのは全く別の問題」 ■アイヌの女性が心を痛め「歴史を塗り替える」と涙 研究者がほかにも問題点として指摘するのは、北海道旧土人保護法を称讃するパネルです。 縄文文化にルーツをもちながら独自に発展してきたアイヌ文化。 1869年、明治政府は蝦夷地と呼ばれていた土地を「北海道」と改め開拓します。 国家に編入されたアイヌは土地を奪われ、生活習慣も事実上禁止されました。 アイヌが困窮を極めると、1899年「北海道旧土人保護法」が制定されましたが、その後もアイヌは差別的な扱いを受け続けました。 丁寧に展示を見ていた山下さん。一番心を痛めたのは、このパネルでした。 アイヌ民族 山下明美さん 「『至れり尽くせりの旧土人保護法』と書いてあるんだよ。もう頭に来てさ。歴史を変えるってこういうことなんだと本当にびっくりした」 涙を流す山下さんに対し、パネル展を支持する女性からはこんな意見も…。 パネル展を支持する女性 「どうして反対側のパネル展をやらないんですか?これが間違っているのなら逆側のパネル展をやったらいかがでしょうか?」 アイヌ近現代思想史の専門家は、誤った解釈に基づくパネル展自体が差別を助長すると批判します。 アイヌ近現代思想史を研究するマーク・ウィンチェスターさん 「アイヌ文化は野蛮であり、アイヌの生活は不潔で未開、だから同化政策は必要であり、むしろ恩恵であったという物語がパネル展の中で作られていた」 ■「和人が歴史を美化している」 「和人がアイヌを苦しめた歴史を美化している」山下さんがそう感じたパネルもありました。 農耕に適さない、水源地から遠い土地を選んだのはアイヌだと主張するものです。 アイヌ民族 山下明美さん 「アイヌは狩猟民族だから農耕はできなかったと思う。それでも(和人は)農耕に適さない土地を与え『アイヌに土地を与えた』とされてきた。それを『アイヌは湿地帯が嫌いだった』と書いてある。(農耕に適さない土地をアイヌが選んだかのような)言い方をするのが差別」 アイヌの人々の反応を見て、主催者に声をかける人も。 パネル展に訪れた男性 「発表会によってアイヌの方で傷ついている方がいる」 主催した『アイヌの史実を学ぶ会』伊藤昌勝会長 「そんなつもりでやっていない、そんなところありますかね?素人の発表会だから、間違っていれば直します」 ■傷つくアイヌ民族を前に記者が主催者に対話促すと… 記者が主催者に、ある提案をしました。 馬場佑里香記者 「アイヌの方々がきょう見ていたの知っていますか?」 主催した『アイヌの史実を学ぶ会』伊藤昌勝会長 「知らない。あなた分かるの?アイヌって」 馬場佑里香記者 「1回お話ししてみるのはどうですか?せっかく来てくれているので」 主催した『アイヌの史実を学ぶ会』伊藤昌勝会長 「会っても…、仲間に言われているから会いません」 アイヌ民族との対話を拒否しました。 アイヌ民族の葛野次雄さんは、パネル展を許可した札幌市に、規制を求めます。 アイヌ民族 葛野次雄さん 「言える自由もあるけど、言えない人の自由はどこにあるの?札幌市議の人たちが(アイヌ差別を禁止する)条例を作るべきでしょう」 ■“差別的”批判されるパネル展 札幌市はなぜ許可したのか? 堀啓知キャスター: 当事者のアイヌの女性が泣いているというのが、今回のパネル展を物語っているかと思います。公共施設で差別的な展示は許されるのかどうかですが。 世永聖奈キャスター: 地下歩行空間の利用規約ではアイヌ差別を禁止した「アイヌ施策推進法」の遵守を求めています。 堀キャスター: 札幌市はこの規定を根拠に展示を不許可にすることはできないのでしょうか? 世永キャスター: 札幌市は「法律が規定する差別の明確な判断基準がないため国に示してほしい」としています。この対応をどうみるか、行政の専門家に聞きました。 ■行政法の専門家が札幌市批判「主体性を発揮し条例作るべき」 北海学園大学の元教授(行政法)秦博美さん 「憲法21条では、表現の自由が保障されている。しかしこれは絶対的な権利ではなく、公共の福祉の見地から制約することは可能」 北海学園大学の元教授(行政法)秦博美さん 「札幌市は主体性を発揮して国に先駆けてガイドライン等で差別の基準を制定するべき。条例を制定する場合は、人権問題等についての専門家を集めた審議会を作り、ガイドラインや条例の中身を議論する」 堀キャスター: 差別やヘイトスピーチを禁止する独自の条例やガイドラインを作っている自治体も全国にはあります。 秋元市長はパネル展の内容は札幌市の見解と違うと言いますが、差別のない社会をどうつくるか行政としての責任が問われています。