身体のリズムを感じ取る　環境を整え身体に優しい生活　自立した90歳を目指して скачать в хорошем качестве

身体のリズムを感じ取る　環境を整え身体に優しい生活　自立した90歳を目指して

私たちは気温や気圧などの体外環境の影響を受けながら生きています。そして体外環境が変化しても、体内の環境を一定に保とうとする仕組みが、私たちの身体の中には備わっています。この、身体のバランスを保とうとする仕組みのことを、ホメオスタシス（生体恒常性）と呼びます。これは、自律神経・内分泌・免疫の3系統から成り立っており、私たちが健康的に生きていく上で、とても重要な働きをしてくれます。例えば体温が低い時には、肝臓での代謝を盛んにして熱を産生し、体温が下がらないように働きます。それでも足りない時には、筋肉を震えさせることで、熱を産生します。逆に体温が高い時には、肝臓での代謝を低下させて体温の上昇を抑え、それでも不十分な時には、汗をかいて体温上昇を防ぎます。また、日中の活動時間に、これから頑張ろうと活動モードに入ると、ストレスに打ち勝つために交感神経系が優位になります。血圧や脈拍が上がり、気道が広がり呼吸数も上がり、消化器系の活動が止まります。夜間の休息モードに入ると、副交感神経系が優位になり、血圧や脈拍が下がり、気道が収縮し呼吸数も下がり、消化吸収が盛んになります。 女性ホルモンのエストロゲンやプロゲステロンように、月周期で変動するホルモンもありますが、日内変動を示すホルモンもあります。日中に分泌されるホルモンの代表はコルチゾールです。いわゆる、抗炎症作用や蛋白同化作用のあるステロイドの代表です。コルチゾールは起床時にピークを迎え、ストレスを強く感じた際にも分泌量が増加します。体内の代謝を盛んにする作用があり、このホルモンのピークに遅れて、私たちの体温は夕方にピークを迎えます。 夜間にピークを迎えるホルモンの代表は成長ホルモンとメラトニンです。成長ホルモンは入眠してから90分くらいで分泌のピークがやってきます。このホルモンはヒトの身体の成長のみならず、糖や脂肪の代謝にも関与しています。 メラトニンは、朝日光を浴びると分泌が抑制され、目覚めてから16時間くらい経過すると体内時計からの指令が出て分泌が増加し、入眠作用を体にもたらします。 このように、私たちが知らないところで、自律神経・内分泌・免疫の3つの機能が働くことで、身体の恒常性が保たれ、昼間に活動し夜間に休息して、安心して生活をすることができるのです。 身体が自動的に調節してくれると言っても、それには限界があります。加齢と共に調整機能が低下すると、急激な温度差に耐えられず、血圧の変動が容易に起こり、失神したり、脳梗塞や心筋梗塞が引き起こされたりします。特に冬場は、室内に於いても、風呂場やトイレでは体温の変化や腹圧による影響などで、容易に身体のバランスが崩れます。 本日は、環境に配慮した身体に優しい生活についてお話ししたいと思います。 こんにちは、Dr.Yです。 寒くなって最も危険な場所は、実は自宅の「風呂場」や「トイレ」であることをご存じでしょうか？トイレで命を落とす人の数は、交通事故で亡くなる人の4倍以上と言われています。また、トイレ中もしくはトイレの後で意識を失って倒れる人たちも大勢います。しかも、その殆どが冬季に発生しています。 寒い脱衣所で服を脱ぐことは、まるで冬場に滝業を行うようなものです。また、便秘気味でトイレで息むことは、トイレで重量挙げをするようなものです。もしも、おばあちゃんが、冬場に滝業をしようとしたり、おじいちゃんが重量挙げをしようとしたら、「危ないからお止めなさい」と、周りの人たちが止めに入るはずです。にも関わらず、室内でそれと同じぐらい負荷のかかる行為が、当たり前のように毎日繰り返されています。身体を思い遣り身体に優しい生活を送るためには、入浴やトイレなどで、私たちの身体にどのような変化が起きているのか？ということを知っておかなければなりません。 まず入浴についてお話しします。冬季は居室の温度に比べて、脱衣所や浴室の温度が低いものです。この温度差が大きいと、脱衣所での寒さから身を守る為に交感神経が興奮し、血圧が上昇し脈拍が増加します。その後浴槽に入ると、今度は身体が温まるため、血圧が下降し脈拍が減少します。身体が温まって、再び寒い脱衣所で着替えると、寒さに反応して血圧が上昇し脈拍が増加します。 居室の温度と脱衣所・浴室の温度の差が大きいほど、そしてお湯の温度が高いほど、血圧の上昇下降が顕著となります。これを防止するためには、脱衣所・浴室の温度を予め高くしておく必要があります。そのために、脱衣所用ヒーターや浴室環境暖房乾燥機などの設置が望ましいと思います。 入浴には身体の汚れを落とす効果以外に、心の汚れを落とす効果があります。身体の汚れを落とすだけであればシャワーを浴びるだけで構いません。湯船に浸かりゆったりと入浴することで、リラックスしたりリフレッシュする効果があります。一般的には、38℃～42℃のお湯に身体を洗う前と後の2回入浴し、合計15分程度湯船に浸かるのが理想とされています。リラックスして思索に耽（ふけ）りたい時には、低めの温度の湯船に長く浸かりましょう。ストレスを発散して気合を入れたい時には、高めの温度のお湯に短時間入浴するのがお勧めです。このように、入浴の目的を考えて風呂の温度と入浴時間とを設定しなければなりません。また、入浴するタイミングも考えておきましょう。深部体温の変化を予測しながら、就寝時間の90分前までに入浴するように心がけましょう。風呂から出て、暑さが和らいだら、今度は湯冷めしないように、深部体温が下がりかけたタイミングで、保温を心がけます。 良い睡眠のためには、それなりの理由があります。人の体温は日内変動があり、日中の活動期を過ぎた夕方にピークを迎えます。その後リラックスするとともに早朝までゆっくり下がります。そして、深部体温が下がる過程で、ゆったりと眠りにつくことができるように、脳の睡眠中枢が設定されています。入浴してしばらくすると皮膚温の上昇に遅れて深部体温が上がり、温まった体温を元通りに下げようと体の防御メカニズムが働き、その反動で、深部体温は上がった分だけ大きく下がろうとする性質があります。ですから、熱いお湯に入って深部体温が上がると、そのぶん大きく深部体温が下がるので、熟睡できるということになります。しかし、熱いお風呂だと交感神経が活発になり一時的に覚醒状態優位になります。ですから、就寝直前に入浴する場合には、睡眠に悪影響を与えないように40℃くらいまでの温度に抑えた方が無難だと思います。 温まった体温を元通りに下げようと体の防御メカニズムが働き、入浴前よりも深部体温が下がった時に、汗をかいたまま薄着でいたりすると、今度は身体が冷え過ぎで湯冷めをしてしまいます。ですから、入浴後は身体が火照ってしまったら、適度に冷ました後で、しっかりと保温することが必要となります。 汗をかいた後で、冷たい飲み物をゴクゴク飲むという爽快感を味わうために、水分を我慢して入浴する人がいますが、これはあまりお勧めできません。脱水のために湯船から上ろうとして血圧が下がり、立ちくらみをして、意識を失う人が時々います。立ちくらみしやすい人は、脱水気味での入浴や飲酒後の入浴を避けて、立ちくらみが起こらないように、注意しましょう。 次に排便・排尿の身体に対する影響を考えてみましょう。皆さまはご存じのとおり、呼吸は自律神経系と密接に関係しています。それゆえに、自律神経系を整えるために呼吸を整える、いわゆる呼吸法が、心身の健康法として普及しています。息を吸う時には血圧が下がり脈拍が速くなります。息を吐く時には血圧が上がり脈拍が遅くなります。特に脱水気味の状態ではこの変化が顕著に現れます。 排便時に息を止めて下腹に力を入れて顔を真っ赤にして息むことを「怒責」と言いますが、これは心臓、血管、肺、脳に強い負荷がかかります。くも膜下出血のリスクを高まり、心臓や肺の病気の患者さんでは、では呼吸困難になることもあります。また高齢者で便秘の人は、トイレでいきむことが多いため、脳卒中や心筋梗塞を発病する頻度が高いと言われています。 息をこらえると、胸腔内圧が上昇します。すると上大静脈・下大静脈に血液が流れにくくなり、心臓に還流する血液が減ります。心臓が充満しないうちに収縮することになるため、血圧が下がります。これはまずいということで交感神経が緊張して頻脈となり血圧が上がります。こうして息こらえを行う事により、身体は一度ブレーキがかかって徐脈となり、その反動で興奮して頻脈になってしまうのです。 医療の現場では、バルサルバ手技と呼び、15秒間息こらえをすることで、心臓に刺激を与えて、不整脈の治療方法の一つとなっています。このように、息むということは、不整脈を止めるくらいの大きな負荷が、心臓血管系にかかるってしまうのです。 トイレで息まないためには、便秘にならないように排便コントロールすることが大切ですが、それと同時に下腹の腹筋を鍛えることも大切です。理想的な排便方法とは、ラマーズ法と同じように、息を吐きながら息む方法です。具体的には、下腹の丹田に力を入れてゆっくりと息を吐くのが丹田呼吸であり、丹田呼吸をしながら排便するのが理想的なのです。バルサルバ手技のように、排便時に息を止めて顔を真っ赤にして息むのは、心臓血管呼吸器に負荷がかかります。排便はお産ほど腹圧を必要としませんので、ラマーズ法のように大袈裟にヒーヒーフーとする必要はありません。丹田呼吸をしながら、丹田に力を入れてフーと息を吐きながら排便しましょう。 排便の時に息まないということと同じくらい大切なのは、パンパンになるまでトイレを我慢し過ぎないということです。トイレで排泄した後で失神して救急搬送される人が時々いらっしゃいます。特に飲酒後の男性が立って排尿した後に、血圧が下がって失神することが多いのです。これを排尿失神と呼びますが、膀胱が満タンになっている状態では交感神経が活発になり、血管が収縮しているために血圧が高いのです。それを一気に排出すると、迷走神経反射で副交感神経が活発になり、血管が拡張して血圧が下がったことで、脳の血流が減り失神してしまうのです。 このように、人間の身体には、体外環境が変化しても、体内の環境を一定に保とうとするしくみホメオスタシスがあります。暑い時には身体を冷やし、寒い時には身体を温め、水分を取り過ぎた時には尿量を増やし、脱水の時には尿量を減らします。ストレスがかかれば、血圧と脈拍と呼吸数を上げて臨戦状態となり、リラックスしている時には、身体を休めると同時に、消化管の活動を盛んにして、身体の回復を促します。このように無意識のうちに身体のバランスを整えている、自律神経系の調節機能が上手く作用しないと、身体のバランスが保てなくなります。 身体が勝手に何とかしてくれるだろう！と考えて、身体に甘えるのではなく、身体のホメオスタシスを理解しながら、身体を労りつつ、日時生活の中で、ちょっとした工夫をすることで、急激な変化を避けることができるのです。身体を鍛えるのと、身体を虐めるのとは、全く異なります。身体に対する余計な負担を避け、必要なトレーニングを行い、長持ちする健全な肉体を100歳まで維持したいものです。 本日は、身体のホメオスタシスのシステムの素晴らしさについて解説し、身体に対して急激な環境変化を避けることで、身体に優しい生活を送ることの重要性についてお話ししました。また、皆さまのお役に立てるようなお話しをしたいと思います。 ドクターYでした。 #ホメオスタシス #生体恒常性 #入浴温度 #排便 #丹田呼吸