【ボスニア紛争・スレブレニツァ（2002）】スレブレニツァで起きた虐殺　Srebrenica 2002(Bosnia-Herzegovina) скачать в хорошем качестве

【ボスニア紛争・スレブレニツァ（2002）】スレブレニツァで起きた虐殺　Srebrenica 2002(Bosnia-Herzegovina)

資料　   • Запись   ボスニア紛争末期の1995年7月、東部の町スレブレニツァがボスニアのセルビア人武装勢力の侵攻を受けて7月11日に陥落し、捕まった大量のイスラム教徒のムスリム人(現在のボシュニャク人)男性が、セルビア人部隊によって複数の場所で処刑された。その多くは兵役年齢に達した男性だったが、子供や高齢者も多く犠牲になっている。 第二次世界大戦後のヨーロッパで最悪の虐殺と言われている。 2002年のスレブレニツァの町やポトチャリの様子をもとに、虐殺の経緯を説明。 ※動画内の情報には不適切・不正確な部分があるかもしれません。 ※訂正・動画内に出てくる農協の倉庫（クラヴィツァ）での虐殺で、犠牲者の数を約1300人と説明していますが1000～1500人（推定）の誤りでした。 【更なる説明】リンク先の投稿には図録などあり ※不正確な部分があるかもしれません。 ●複雑な民族と国家構成 冷戦下の社会主義時代は連邦国家。各共和国は構成民族の割合が違ったが、クロアチアやスロベニア、セルビア（およびコソボ自治州）では各共和国内の民族比は明白に分かれていた。 一方ボスニアは主に3民族、イスラム教徒のムスリム人（現ボシュニャク人）、セルビア人、クロアチア人が町や村単位で構成比率が変わり、各々の地域で状況が変化し複雑化した。全体的にはボスニア軍（ムスリム人主体）、（ボスニア内の）クロアチア軍の合同軍対「スルプスカ共和国」軍（「セルビアの国」ボスニア独立後に国内セルビア系が宣言した）だったが、モスタルなどの西部では途中からボスニア軍とクロアチア軍が戦っている。　一方旧ユーゴスラビア時代に全体を管轄したユーゴ連邦軍（人民軍ＪＮＡ）は全ての民族で構成されていたが、複雑なユーゴでの民族紛争に対応できず、当初の対立の調停者としての役割からユーゴで人口の多数を占めるセルビア側の軍隊となっていった。92年のボスニア独立でボスニア内の連邦軍は違憲となりセルビアに引き上げたが、武器やセルビア系兵士は残り、スルプスカ共和国軍（＝セルビア人武装勢力）となった。（一部ムスリム系、クロアチア系は脱走して各軍に合流）このため重火器や戦車など連邦軍の武器を大量に引き継いで圧倒的な軍事力を持った。またセルビアと国境を接するボスニア東部は武器や人員の補給に問題がなかった。 ●東部戦線・スレブレニツァが飛び地に 　東部戦線は92年初期にはスルプスカ側に有利でスレブレニツァ地域は陥落したが、その後ムスリム人武装勢力（ボスニア軍）が巻き返し、飛び地となった。山深く道が少ない事からボスニア軍の飛び地への展開は可能で、周囲の村でムスリム側によるセルビア人への虐殺や追い出しも発生していた。これに業を煮やしたスルプスカ軍が攻撃を続け、多くのムスリム系周辺住民がスレブレニツァに避難民としてなだれ込んだ。　この惨状を目の当たりにした国連軍が、93年にこの地域を含む飛び地を安全地帯に指定、国連軍を駐留させ双方の非武装化を図ったが叶わなかった。紛争の長期化とスルプスカ軍の残虐行為の報告が増える中で国際社会のスルプスカへの圧力が高まりNATOの介入が強まる。サラエボ周辺などスルプスカ軍の重火器の撤去が要求され、数か所でNATO軍の空爆が実施されると、スルプスカ軍は国連軍職員を人質にし国連軍との関係も悪化してゆく。 ●スレブレニツァ陥落 　この状況の中スルプスカの指導者カラジッチや、軍を率いるムラディッチ将軍は飛び地の制圧に執念を燃やし7月安全地帯に侵攻した。スレブレニツァを守るボスニア軍の主力はすでに撤退していて残存の兵士はわずかで残る多くは民間人だった。 　虐殺は大きく分けると、ポトチャリの国連軍基地前に避難した住民の男性、山に逃げてボスニア軍支配地域へ向かう「死の行軍」の途中で投降したり捕まった兵士や一般男性、スレブレニツァ近くで制圧された町や村の男性となる。 　国連軍基地前では避難民の選別が行われ、兵役年齢に達した男性（だけではない可能性あり）が拘束され、ブラトゥナツの小学校に移送、その後、北方のズボルニク周辺にある複数の臨時収容所や空き地に移されて処刑された。 　「死の行軍」は山や森を通って北に進んだが、ノバ・カサバの幹線道路を横切るのに失敗し山に取り残されたり、諦めて投降した男衆が牧草地やサッカー場に集められ、近くの空き地や倉庫で虐殺された。「逃亡者狩り」は広範囲に数日間続き見つかると処刑された。　虐殺はスルプスカ軍のズボルニク旅団や、他の治安部隊が関わったが、拘束されたムスリム人の一部は、セルビア共和国から来た部隊にサラエボに近い場所で手を下されている。極めて残忍な態度と方法で処刑は進められ、目の前で処刑された遺体を片付けた直後に銃殺された犠牲者もいる。 　遺体は現場やその近くに埋められたが、証拠を隠すため9月ごろから掘り起こして別の場所に埋められた。調査では再埋葬地で見つかった砂利やゴミなどの破片から、虐殺現場を照合している。 　後に数人の重要な関係者が捕まって国際刑事裁判所（ICTY　旧ユーゴ国際戦犯法廷）に送られた。スルプスカ共和国の指導者カラジッチ（元大統領・終身刑）や軍を統率したムラディッチ将軍（終身刑）、後ろ盾にいたセルビア共和国のミロセビッチ元大統領も別件で捕まり（スレブレニツァとの関連や訴追は不明、他の裁判途中で死亡）、部隊の指揮官などもオランダのハーグ（ICTY本部）に送られた。 制圧された地域は飛び地だったゼパにも及び、東部はスルプスカ支配地となったまま95年12月のデイトン和平合意調印でスルプスカ領に確定（飛び地の中でゴラジュデだけが細い領土でボスニア連邦と繋がった）ムスリム人が多数だったスレブレニツァの民族比は大きく変化した。 ●国連軍の状況 　現場にいながら虐殺を止められなかった国連保護軍は、多くの批判を受け、 部隊を送ったオランダは自らの責任を認めている。当時オランダ部隊は混乱と国際関係の緊張の中に立たされていた。スルプスカ軍が侵攻を始めた7月6日以降、安全地帯の監視所の数か所が制圧され、この時UN兵士の撤退に反対したムスリム人が装甲車に手榴弾を投げオランダ兵1人が死亡した事で国連の対応は困惑していた。NATOへの空爆要請も出されたがうまくゆかず陥落を迎える。国連兵士の身の安全を確保する事が優先された。 また国連軍基地での収容や保護は限界で、休暇で戻ったオランダ兵士が再入国が阻止されるなどで基地の人員も減っていた。 ●ムラディッチ将軍 　11日の午後ムラディッチは南から町に向かっていた。途中で脱輪した国連軍装甲車に出くわし、救援のため自ら音頭を取って戦車を使ってワイヤーで引き揚げようとしたがうまくゆかない。その後車で町の南に着き徒歩で中心部に進む。出会う兵士らを激励し「早くポトチャリへ向かえ」と急かす姿がカメラに映されている。広場に着くと「この町をセルビアに捧げます。ついにダヒヤ（イニチェリ）に反抗する時が来た。トルコへの復讐が始まるのです」と語る。1800年代のはじめ、オスマン帝国下で横暴なイニチェリ（元はキリスト教徒の改宗者による精鋭部隊、後に力をつけスルタンに反抗するようになる。セルビアを実質支配した）がセルビア人を迫害した事から、カラジェルジェらが蜂起して一時期自治を勝ち取った。ムラディッチはセルビア民族主義の英雄であるカラジョルジェの栄光と自分と重ね合わせた。（ボスニアのキリスト教徒がオスマントルコ時代に改宗したのがムスリム人だと言われていて、セルビア人民族主義者にとっては裏切り者というイメージがあるのかもしれない） 　その後彼は中心部を進む。機嫌はいいが、高揚しているのか神経質な様子のムラディッチは街中のセルビア正教の教会を見上げ、元住民だったというセルビア人女性兵士と言葉を交わす。当然ムスリム人住民は誰もおらず閑散とした中心部を北に行くと、山からの発砲で兵士が立往生している。 11日夜と12日の午前ムラディッチはオランダ部隊司令官や住民代表とブラトゥナツのホテルで会談した。ムラディッチは高圧的な態度で、ムスリム人の武装解除を今までしてこなかった事、NATO軍が自分の軍隊を攻撃する事を非難し、山に逃れたムスリム人の武装解除が住民の安全の保証の条件で「生き残るか、消え去るか」と突きつけた。国連軍や住民代表にはその権限も力もなく、オランダ司令官は彼らとは連絡が取れない事を伝えた。結局ムラディッチは翌日にバスを用意し女性や子供が乗せられたが、兵役年齢に達した男性（実際はそれ以下も含まれていた可能性あり）らは拘束され近くの民家に監禁された。ホワイト・ハウスと呼ばれる基地近くの民家には監禁された多くの男性の姿が映像で映されている。国連兵がそれを訴えたが意味はなかった。3万人近い女性や子供を乗せた数台のバスは、ボスニア軍支配地域クラダニ付近で避難民を降ろした。 ●死の行軍 1万から1万５千人近くの残存兵士や一般人男性は、残れば殺されると察知して隊列を組んで11日夜にポトチャリから山に入った辺りに集合して北方のボスニア軍支配地トゥズラ方面に向けて出発した。最初の難関はノバ・カサバの幹線道路を超える事で一部は成功したが、スルプスカ軍が展開したため難しくなり、山に残った男たちは他の通過地点を探って彷徨した。ブラトゥナツから幹線道路に繋がる沿道（サンディチ付近）には、戦車と兵士が配備されて砲撃を行い、捕虜交換するので身の安全は保証すると欺いて投降を呼びかけ、多くが応じて山からでてきた。彼らは集められると近くの草むらや、クラビツァの倉庫で処刑された。 　先に進んだ隊列も道中何度も攻撃を受け、ようやくボスニア軍支配地域に近いネズクに到着した時には3分の一に減っていた。捕まった男性の中にいた子供や若者も容赦なく虐殺の犠牲になった。 ●分散移送して虐殺 ブラトゥナツの小学校などからは集められた大量の男性が、ズボルニク周辺の数か所に移送され虐殺が始まった。小学校などの臨時収容所に送られたムスリム人は、その場や周辺の空地で銃殺され埋められた。ピリツァ文化会館のホールには無数の銃弾の跡が残り、悍ましい虐殺が行われた事がわかる。コズルク、オラホバツ、ペトコフツィ、ブラニェヴォなどでも数百人から千人以上の大量のムスリム人が、短い時間で命を奪われた。 ●ボスニア終戦前の状況 スレブレニツァ制圧と虐殺が東部で起きた時期、ボスニア和平への道は欧州や国連から米国やNATOが主導権を握るようになっていた。残虐行為を繰り返すセルビア人に対し力による制裁で和平交渉に応じさせる荒治療だった。この状況の中、クロアチア共和国は7月ｰ8月に国内南部のセルビア人支配地域（クライナ）に侵攻しセルビア人を追い出した。またボスニア西部ではクロアチア人とムスリム人勢力の支配地争いが繰り広げられ、終戦でボスニア内の国境・境界線が確定する前、各民族の動きは活発となった。 #スレブレニツァ虐殺　#ボスニア紛争　#srebrenica #bosnianwar