オデッサの誇り 危機遺産を守る скачать в хорошем качестве

オデッサの誇り 危機遺産を守る

冬の寒さが少しだけ和らいだ日曜日、西日が差す目抜き通りは笑い声であふれていた。ウインドーショッピングを楽しみ、カフェでくつろぐ人たち。穏やかな時間が流れるが、街角で機関銃を手に警戒する兵士の姿に戦時下であることを再認識する。 　ウクライナ南部、「黒海の真珠」と称される港湾都市オデッサ。人口約１０１万人の同国第３の都市だ。さまざまな民族や文化が交流する国際的な貿易港として発展してきた。街には１９世紀のオペラ劇場などの古い建築物が残り、夏になると美しい海にリゾート客が押し寄せる。 　昨年２月、ロシアによる軍事侵攻が始まると、「南部の要衝」はミサイル攻撃の標的となり、美術館などの歴史的な建造物も被害を受けた。市民らは町を守るため、毎日ビーチで砂を袋に詰めて、土（ど）嚢（のう）を作ったという。ウクライナ軍の反攻で、開戦当初の緊張は緩和されたが、空襲警報が鳴り響く日々は続いている。 　国連教育科学文化機関（ユネスコ）は今年１月、「さらなる破壊からこの町を守る決意を示す」と、オデッサの歴史地区を世界遺産に登録した。ロシアによる攻撃の脅威にさらされているとして、危機遺産にも指定した。 　「生まれ育った町が世界遺産に登録されたことは誇らしい」と、オデッサに住むアリーナさんは胸を張る。 　「戦争が終わったら、今よりもっともっときれいな自慢できる町にしたい」。午後のまぶしい光に目を輝かせて、そう宣言した。 （写真報道局　川口良介）