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はじめに:ボディビルダーではなく、体操選手であれ 「球速を上げたければ、身体を大きくしろ」 これは野球界の定説ですが、山本由伸投手の存在はその常識に疑問を投げかけます。 身長178cm、体重80kg。メジャーリーグの中では小柄な彼が、なぜ190cmを超える大男たちを凌駕するボールを投げられるのか。 その答えは、「筋肉の鎧」を着ることではなく、「身体を一本の鞭(ムチ)」のように使う能力にあります。 1. 「柔らかい」だけでは意味がない 「柔軟性が大事」とよく言われますが、単に身体がグニャグニャしているだけでは出力は出ません。 山本投手の凄さは、柔軟性に**「強さ(剛性)」**が同居している点です。 ゴムの原理: 緩んだゴムを放しても飛びませんが、限界まで引き伸ばされたゴムは強烈な勢いで戻ります。 胸郭の柔軟性: 彼はブリッジトレーニングで有名ですが、あれは単なるストレッチではありません。「胸郭(肋骨周り)」を極限までしならせ、その反射エネルギーを腕に伝えるための**「バネの強化」**なのです。 「柔らかいのに、芯が強い」。この矛盾する状態を作ることが、トッププロの条件です。 2. 出力の源泉は「地面」と「連動」 筋力に頼る投手は、上半身の力でボールを押し込もうとします。 一方、山本投手のようなタイプは、**「地面からのエネルギー」**を指先まで漏らさず伝える「パイプ役」に徹しています。 重力を使う: 以前の記事で解説した「軸足抜き」のように、重力を使って倒れ込むエネルギーを推進力に変える。 関節を連動させる: 足→骨盤→背骨→胸郭→腕。このリレーの中で、一つでも関節が固まっている(ロックされている)と、そこでエネルギーが止まり、その部位に負担(怪我の原因)がかかります。 彼が怪我に強い(タフである)理由は、特定の筋肉(肘や肩)に依存せず、全身で負荷を分散しているからです。 3. 我々が真似すべきこと いきなりブリッジをして投げるのは危険ですが、エッセンスは今すぐ取り入れられます。 ウェイト偏重からの脱却: ベンチプレスで胸を固める前に、肩甲骨と胸郭が自由に動くか確認する。 脱力投法の習得: 「力を入れる」のではなく、生み出したエネルギーを「邪魔しない(ブレーキをかけない)」感覚を持つ。 結論:自分の身体を「高性能なバネ」に変える 筋肉を大きくするのは時間がかかりますが、身体の使い方(OS)を変えるのは意識次第です。 山本投手のフォームは、力任せに投げている選手へのアンチテーゼです。 「頑張って投げる」のをやめて、「身体の理(ことわり)」に従って投げる。 それが、あなたの眠っている出力を引き出す鍵になります。