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「原告適格」の著名な判例(行訴法) ① 最高裁平成14年1月17日判決(最判平14・1・17) ― いわゆる「薬事法距離制限違憲訴訟・原告適格」事件 ◆ 事案 薬局を開設しようとしたAが、近隣に既存薬局があるため薬事法の「距離制限」により開設許可を得られなかった。 Aは「距離制限は違憲であり、許可拒否処分は違法だ」と主張して処分取消訴訟を提起した。 一方、既存薬局の側(B)は、「Aが薬局を開設すると自分の薬局の経営が脅かされる」として、Aに対する開設許可処分の取消しを求めて訴訟を提起した。 問題となったのは、既存薬局Bに、Aへの開設許可処分を争う「原告適格」があるかである。 ◆ 判旨 最高裁は、既存薬局Bの原告適格を否定した。 • 薬事法の距離制限制度は、「住民の医薬品購入の利便性」や「医薬品の安全供給」を目的とするものであり、既存薬局の営業利益を保護するための制度ではない。 •したがって、Aに薬局開設が許可されることでBの売上が減るとしても、それは法が保護しようとした利益ではない。 • よって、Bには原告適格がない。 ◆ 意義 この判決は、「法が保護しようとする利益」かどうかを基準に原告適格を判断するという、現在の原告適格論の基礎を確立した重要判例。 ② 最高裁平成17年12月7日判決(最判平17・12・7) ― 「大気汚染自動車訴訟(NOx・PM法)」における原告適格 ◆ 事案 国が自動車の排ガス規制に関する「自動車型式指定」を行ったところ、大都市圏に住む住民ら(喘息などの健康被害を訴える人を含む)が、 • 型式指定が不十分で、 • その結果、大気汚染が改善されず、 • 自分たちの健康が害されている として、型式指定処分の取消しを求めた。 争点は、住民に「型式指定処分」を争う原告適格があるかである。 ◆ 判旨 最高裁は、住民の原告適格を肯定した。 •大気汚染防止法やNOx・PM法は、単に「一般的な環境保全」を目的とするだけでなく、 特定地域の住民の健康被害を防止することを直接の目的としている。 •したがって、規制が適切に行われないことで健康被害を受けるおそれのある住民は、 法が保護しようとする利益の享受主体に該当する。 •よって、住民には型式指定処分を争う原告適格がある。 ◆ 意義 この判決は、 • 環境利益にも「個別的利益」があり得る • 住民の健康被害の危険が具体的であれば原告適格を認める という方向で原告適格の範囲を大きく広げた画期的判例。 ●まとめ(2件の位置づけ) • 平成14年1月17日判決:営業上の不利益は「保護される利益」ではない → 原告適格を否定 • 平成17年12月7日判決:環境・健康被害は法が保護する利益 → 原告適格を肯定 両者は、行政事件訴訟法の「原告適格」論の発展を理解するうえで必須の判例です。